オリンパスペンとマミヤスケッチの明暗。
スタート時の考え方は同じだったにもかかわらず、その後歩んだ道が全く正反対だった、日本カメラ史に残る名カメラがあります。「オリンパスペン」と「マミヤスケッチ」。どちらも1959年に数ヶ月ほどの差で発売されました。コンセプトはどちらも同じ、スマートで手軽に使えるハーフサイズの小型カメラ。
目指すところは同じだったにもかかわらず、オリンパスペンは爆発的な人気を博し、その後他社がこぞって追従する事態になり、ハーフサイズカメラの大ブームのきっかけを作ったわけですけど、反対にマミヤスケッチは今で言うところの負け組、売れずにひっそりと1年余りで消えていったカメラでした。
マミヤスケッチは12,800円、オリンパスペンは6,000円だったので、値段で負けたように見えますが、それだけじゃないドラマがあるのですな。
オリンパスの名設計者だった米谷美久さんの著書に「オリンパスペンの挑戦」があります。朝日ソノラマのクラシックカメラ選書っていうシリーズの中の一冊、この中にマミヤスケッチを設計したマミヤの宮部甫専務さん(元ミノルタ設計部長)とのやり取りが出てくるのですな、
当時まだ駆け出しの設計者だった米谷さんに、割り切って設計したペンのことを褒めているのですけど、マミヤスケッチは社内の意見を取り入れるうちに、ハーフサイズから24×24mmの真四角フォーマットに変更、距離計搭載など最初のオリジナリティは無くなり、中途半端で高価なカメラになったそう。そのせいでか故障も多く返品続出だったそうですな。
結果的に売れずに短期間で消えていったことが、後に希少価値になってマニア受けするカメラになってしまったわけで。女優の広末涼子さんが愛用していることで、中古価格が高騰したこともありました。(笑)
一方オリンパスペンは、当時安いカメラでも月給(大卒初任給が12,000円前後)の2倍ぐらいだった頃に、月給の半分の6,000円で、いつもポケットに入れて持ち歩けるカメラってコンセプトを貫き通し、商品化にまでなんとか漕ぎ着けても、重役でもあり工場長だった方から「こんな安カメラは、ウチの工場で作らない」とまで言われ、三光商事って別会社を作って生産に乗り出したという、発売されても販売店からオモチャじゃなくて、カメラらしいのを持ってこいと言われたそうで、最初はもう散々な扱いだったそうですな。
だけど手が届く価格で、簡単に使えて、写りが良いということでどんどん人気になっていきました。オリンパスペンとマミヤスケッチの勝敗は、逆風の嵐しかない中で、設計者がどこまで最初のコンセプトを曲げずに戦ったかってところが明暗を分けたのだと思います。
オリンパスペンはその後、たくさんの機種が登場しましたが、オジサン初代は持ってなくて2代目のペンSとそれ以降の機種でしたけど、どれも実によく写るカメラですな。もちろんマミヤスケッチも大好きで、真四角写真を山ほど撮りましたよ。(笑)
どちらも数年前に部品取り用に温存していたジャンクからレンズを取り出して、富士フィルムさんのXマウント用に改造、今はデジタルで楽しんでいますけど、改めて写りの良さに感動しています。
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