立ち飲み百景27 思いでの酒場列伝、その1。
今まで行った酒場は数知れず、当然立ち飲みも。最近は気に入った所にしか行かなくなって、新規開拓を怠っておりますけどね、冒険より安定、変化より定番がなじむようになってきているのですな。
新しい酒場はいっぱい出来ているのですけどね、試しに入ってみてもリピートする事がほとんど無くなりました、何となく馴染めなかったり、居心地が悪かったりするのでね。若い人のお店は特にそう、オシャレで明るくきれいで元気がよくて、いい事づくめなのですけどオジサンの居場所が無い。
どちらかというと昭和レトロと言いますか、煤けたようなちょいと古びたお店の方が居心地がいいわけで、お店の大将もオジサンより年輩の方がやっているような年季の入った酒場。
星の数ほどの酒飲みの相手をしてきた、顔に刻まれたシワがそのまま酒場の履歴書のような渋い大将やオカアサンがやっているお店って和みます、入った瞬間の空気でそれが分かるのですな、たとえ初めてのお店であってもココではいいお酒が飲めそうって肌で感じられますからね。
常連のお客さんも年季が入った人ばかり、就職して上司に連れられて来て以来定年を迎えた後も通い詰めているなんてざら、お店にとっては人間国宝のような渋い常連さんと会話を楽しみつつ杯を重ねるというのが至福の時なのでありますよ。
そんなこんなで思い出に残る酒場のアレコレを書いてみようかと。(笑)街歩きで見かけた古い酒屋さん。片隅で立ち飲みしているお年寄りが居たので入ってみました。おばあちゃんひとりでやっていて、アテは柿の種とかスルメのような乾き物しかない小さなお店。
なのに壁にはなぜか「馬刺有ります」のお品書きが一枚だけ貼ってありました。こんな酒屋さんで何で馬刺?気になったので聞いてみたところ、ご主人が生きていた頃にはメニューにあったそうで、他のお品書きは全部はがしてしまったけど、ご主人直筆のこれだけは、はがせなくて残してあるのだそう。「今でも主人と一緒にやってる気になりますねん」の言葉に思わず目頭が熱くなりました。ええ話をアテに飲む昼下がりのビールはいつもよりちょっと苦かったのでした。
夫婦で二つのお店を切り盛りしてて、オカアサンが立ち飲み、その隣でご主人は割烹料理屋、仕入れが一緒なので、割烹料理屋でご主人がさばいた魚が立ち飲みにも安く並ぶというお刺身メニューが半端じゃないお店、にぎり寿司もガラスケースにずらり、開店とともにほぼ満席になるのも当然かと。立ち飲みのアテとは思えないクオリティーの高さに、その頃同僚と毎日のように通ってました、お互いしっかり太りましたよ。(笑)
その反対の立ち飲みもありました。品数は少ないのですけどお刺身も置いているお店、注文して出てきたお刺身が新鮮か古いか、一緒に出てくる醤油皿に盛られたわさびの量で分かるという。
わさびてんこ盛りの時は、刺身がもうヤバイのでしっかり殺菌して食えという大将の暗黙のサイン、腹を壊してもこの店の刺身で当たりましたなんて口が裂けても言うなよって事。ま、その程度でおかしくなるような常連はひとりも居ませんでしたけどね。(笑)
何しろお店も古けりゃ、大将も古い、出てくる物はもっと古いという、あらゆる意味で賞味期限切れを楽しむ立ち飲み、その分激安で千円でベロベロになれるセンベロの店。みなさんお酒でアルコール消毒しながら飲んでました。
書いてていくらでも思い出せるのがオジサンのお酒の履歴書、まだまだあります、その辺りはまたいずれ、本日はこの辺で、お後がよろしいようで。(笑)
お刺身目当てに、足繁く通っていた頃の写真、今も健在、帰り道じゃなくなったのでご無沙汰していますけど、機会があれば行きたい名店。
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