サンニッパだった頃
300ミリ F2.8という望遠レンズ、通称「サンニッパ」。
普通ならスポーツ写真のプロカメラマンなどが使うレンズなのだが、アイドルのグラビア写真や風景、鉄道写真に使うのが流行した時代があった。
開放F値が2.8ということでレンズは大きく重く値段もけた外れに高かった。前玉は赤ちゃんの顔ぐらい大きく、モータードライブ付き一眼レフを付けてもレンズの方が目立ってしまってカメラが小さく見えたものである。
絞り開放で撮ると、ピントの合う奥行きはほんのわずか、まさに紙一枚ぐらい、シビアなピント合わせを要求される意味でも使いこなしの難しいレンズだった。
当時はアイドル全盛時代、グラビア雑誌のポートレイトにこのレンズで撮った写真があふれかえっていて、同じような写真が撮りたいカメラ小僧にも人気のレンズだった。ポートレイトを撮ると背景はボケボケで人物だけが浮き上がるように撮れるのが魅力だったのである。
あのころデパートの屋上で開催されていた新人アイドルのイベントにはこのレンズを持ったカメラ小僧がズラリ並んでいたものである。場所取りに置いていた機材を盗まれたりの話も多くあった。
売れるとなるとレンズメーカーもカメラメーカー純正品よりも安い価格でこぞって出してきて、サンニッパを持つのはカメラ小僧のステータスだった時代。今考えると何十万もする高額レンズを高校生や大学生が持っていたのが不思議であった。
私はこのレンズを持っていなかったが、友人の鉄チャンと一緒に撮影に出かけると貸してくれたので、入り浸っていた写真屋さんの撮影会などで何度か使ったことがある。
お店に来るお客さんにもっとフィルムを使ってもらおうということで、特に年輩のお客さん相手にポートレイト撮影会と称してイベントをやっていた。撮影指導は店の主人と鉄チャンの友人、もう一人の友人はモデル調達係、ガールフレンドの友人やそのまた友達などをかき集めてくるのが得意だったヤツである。私は広報担当、会報誌を作ったりしていた。懐かしい思い出である。
その撮影会でサンニッパを貸してもらっていたのであるが、300ミリである、モデルから相当離れてもファインダーを覗くと顔のアップで画面いっぱい。
「笑顔下さ~い」とモデルに指示を出すのにも大声で叫ばなくてはならないわ、レンズは重たいわ、ピント合わせはシビアだわで重労働。
でも撮れた写真はグラビア雑誌のポートレイトのようにきれいだったのを覚えている。
すごいレンズだと思ったが、撮った写真を見返してこのレンズを使えば誰でも同じように撮れることに気がついてしまってから、サンニッパを借りることはなくなってしまった。
やはりポートレイト向きのレンズではないなというのが使ってみての結論。その後ブームが過ぎると中古カメラ屋さんのショーウインドーに大量に並んでいたのを見かけた。
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コメント
よもかめ亭主さんこんにちは。
ミニチュアなんですか。
実物持ってないので写真に騙されました(笑)
使う場面が想像できないので欲しいと思ったことないんですけど
時々見かけると「おおっ!」ってなる迫力はありますね。
投稿: Myrrh | 2015年5月 9日 (土) 17時05分
よもやま亭主さんこんにちは、自分も騙されました(汗)細腕の自分には無理なレンズですね(笑)サンキュッパやヨンキュッパのジャンクは大好きです
投稿: ヒロシ | 2015年5月 9日 (土) 18時51分
Myrrh様、ヒロシ様、今晩は。
なかなか良く出来ているでしょう、実はタカラトミーアーツのガチャポンです。http://www.takaratomy-arts.co.jp/items/item.html?n=Y995194
うまく撮れば本物に見えるんじゃないかと思ってやってみました(笑)。
投稿: よもかめ亭主 | 2015年5月 9日 (土) 19時47分