東京食文化のエトセトラ
東京に出掛けたとき、ガイドブックやネットやテレビで見た老舗、名店に行ってみて感じたことは、確かにおいしいけどお値段も相応。
観光や出張で行ったときにふらっと寄ってみるにはいいけど、仕事帰りに毎日寄る店にはならないなと思いましたな。
お店の名前は出しませんが、洋食屋さん、天丼屋さん、寿司屋さん、お蕎麦屋さん、鰻屋さん、どじょう屋さん、天麩羅屋さん、馬肉屋さんといえばグルメな方なら察しがつくでしょう。池波正太郎さんのエッセイに出てきそうなお店。
ま、こういうお店に毎日通える経済力のある方は住む世界が違うので別にして、私が好きなのはもっと庶民的な食文化のアレコレ。
勤め人が仕事帰りにチョット一杯、千円札一枚で楽しめるような、安くて旨い食べ物とそれを提供してくれるお店こそが名店ではないかと思うわけで。
若かりし頃、下町や昔の遊郭建築が残っているところを撮りたくて、一週間休みをとって東京に出掛けたことがあります。
蔵前にあった木造の商人宿に滞在し、朝早くから浅草、日本堤(昔の山谷)、北千住、南千住、京島、三ノ輪などなどひたすら歩き回り写真を撮りまくりました。
一日撮り歩いた後のお楽しみは、下町の酒場での一杯。美しくなく、目立たず、カウンターがメインのご年輩率の高そうな店を探して入りましたが、まちがいなくハズレ無し。
特に初めて食べたもつ焼きにはえらく感動しましたな。東京では焼鳥の提灯が下がっていても実は豚肉と聞いて「ホンマかいな」と思っておりましたが、豚食文化が隅々まで行き渡っているのでしょうね。
「東京の人はこんなエエモン毎日食ってるのか」とチョット羨ましかったですな。
神戸に東京のもつ焼きを食べさせる店が出来たとき早速行ってみましたが、やっぱりなんか違う、しかもお店がおしゃれすぎ。やはり現地の庶民的な店で食べるのが一番かと。
煮込みも関西のどて焼きとはかなり趣が違いましたが旨かった。どの店でも結構ボリュームがあったのも思い出しました。
ホッピーも今でこそ関西でも扱いがありますがその頃は無かったので初体験でした。あんまり旨いものではなかったですが。
下町の酒場は、地元の方々の憩いの場なので、長年通い続けている御常連がほとんど、一人で入ってきて席に着くと何も言わなくても「いつもの」が出てくるのは間違いなく御常連。こういう方たちはふらりと入ったヨソ者にも優しくて、お品書きの分からない料理などを店の人に尋ねると、大抵横から割り込んできてあれやこれやと教えてくれましたな。
特にもつ焼きは部位によって呼び名が細かくあって、お品書きを見ても最初さっぱり分からなかったのでいろいろ教えていただいてずいぶん勉強になりました。
ま、それをきっかけに御常連たちとヨソ者の間にひとときのコミュニケーションが芽生えるわけで、おかげで楽しい時間を過ごせたのもいい思い出です。
万国共通、酒飲みは皆友達、下町の酒場は人情のダシが利いた旨いモノの宝庫でした。
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