写真展で説教して帰った人
もう昔、若かりし頃の話だが、友人と二人、街の写真ばかりで写真展をやったときのこと。
街というもののボリューム感を見せたくて、会場の壁中に、これでもかと数百点の街の写真を貼りまくって展示した。
心斎橋アメリカ村のウインク。MINOLTA AUTOCORDⅢ
一枚一枚の写真より全体で「街が好きだ」ということを表したくてやってみたのだが、来場者の感触は、くっきり二つに分かれてしまった。
面白がって一枚一枚しっかり見てくれた人半分、さらりと一巡してサヨナラの人半分だった。
その中で一人、私に説教をして帰ったアマチュアカメラマンのおじさんがいた。
曰く、「この写真は作品とは呼べず、習作の域を出ていない、こんなものを撮っている君が心配だ。」なのだそうだ。
そしてかばんの中から分厚い写真集を出して見せてくれた。所属する関西では有名な某写真クラブの会員による作品集だという。
どこかで見たことのある様なというか、カメラ雑誌の月例コンテストでうんざりするぐらい繰り返されているステレオタイプな写真ばかりが並ぶ立派な写真集を見せられて、
「こんな写真こそ撮らなくてもいいのでは?」という言葉を言いそうになったがこらえた。
そしてふと思ったのは、この人は本当に、自分が好きなものを撮っているのだろうか、ということである。
作品にすることが目的になっているのなら、もう写真はやめて、もっと自分自身が面白がれることを趣味にすればいいのにと、少し気の毒に思ってしまったのである。
あのおじさんはあの後どんな写真を撮り続けたのだろうか。
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