グレート大衆酒場1
「おばちゃん、とりあえずビール」。
席に座るのももどかしく、まずはこの言葉から酒場時間が始まる。
うだるような暑さ。仕事の後、まっすぐ帰ってひと風呂浴びて飲むビールの旨さも充分に分かってはいるのだけれど、大衆酒場の暖簾の向こうに広がる、呑み助のための聖地を思うと、どうしても巡礼をすませないとイケナイ気分になってしまうのだ。
まずは、席に着くと、巫女さんならぬ仲居のおばちゃんによって「どんっ」と置かれた中ジョッキ。
泡まで旨いこの御神酒をいただきながら、目は壁のお品書きをさまよう。
「え〜と、やっこしてくれる。それと今日は何があんの?」お品書きの定番もにらみつつ、今日のオススメ、旬の味覚も巡礼者として押さえておかなくてはならない。
「ちょっと作ってみてんけど」。
店のおばちゃんのこの言葉は、「おまえとこのヨメはこんな気の利いたモン作ってくれへんやろ。絶対旨いから食うとけ。」という神の言葉だと思って注文しなくてはならない。まず間違いなく旨いのだ。
大衆酒場のおばちゃんというのは、それだけで、ひとつのキャラクターである。毎夜どうしようもない飲み助(巡礼者)を相手に百戦錬磨の強者でなければ勤まらない。
自分より年輩の客にお尻をなでられてもセクハラなどと騒いだりせず、
「今の勘定に付けとくわ。ハイ百万円。」とクールに返す。
「おばちゃん、歳ナンボや?」
「ハタチを三回目!ぴちぴちギャルが三人おる思といて、えっ三人に見えへんか?飲み方が足らんのちゃう。」と、さりげなくおかわりを促す。
以前、とある串カツ屋で、業務用一升瓶入り赤ワインをボジョレーヌーボーだと言い張って飲ませていたおばちゃんがいた。
「ウチでは新品ワインは全部ボジョレーヌーボーや、あんた酒飲みのくせにそんなことも知らんのか。」
今日もおいしく呑みたいのなら、大衆酒場のおばちゃんに勝とうなどと思ってはいけない。巡礼者に口答えは許されないのである。
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