散髪屋は何でも知っている
「お待ちどうさま、こちらへどうぞ。」散髪屋で順番を待っていてこの声がかかると憂鬱である。
散髪屋が嫌いなのだ。だいたい頭や首筋や顔を他人に触られるのか嫌いなので、散髪屋のように、長時間動けないまま触り放題触られるというのが我慢できない。
さっぱりしたいが散髪屋に行くのは嫌、で、どうしてもぎりぎりまで伸ばして、どうしようもなくなってから仕方なく切りに行くということになってしまい、一年で三回ぐらいしか散髪しない。
しかも安い早いの散髪チェーン店で、できる限り短くしてもらうというのがここ数年いつものコースになっている。
以前は行きつけの散髪屋があった。それは子供の頃から行っていた地元の散髪屋なのであるが、夫婦でやっていて、おばちゃんだけになってからは予約をしないと取れなくなってしまって行かなくなってしまったのである。
住宅街の真ん中にある地元完全密着型散髪屋なので、周りの子供も大人もみんなそこで髪を切ってもらっていた。
中学に入るのに丸坊主にしたのもここである。春休みの頃は丸坊主の客が毎日のように来るので、バリカン片手におっちゃんもおばちゃんも儲かってうれしそうだった。
こんな散髪屋であるから、街のことは全部筒抜けである。
「○○君とこのお兄ちゃん、灘校受からはったそうやで」のめでたい話から、「○○のおじいちゃん、退院したゆうて見えてはったけど、ほんまはもう長ないから帰らしてくれたらしいわ」な深刻な話まで、小さな街のニュースはここでほとんどキャッチできるのである。
というか、勝手にしゃべってくれるので、聞かなくても知ってしまうという方が正しい。
個人情報うんぬんの今時、街のことは区別も差別もなく全部ガラス張りというのはすごいことであるが、昔はこんなの当たり前であったのだから、隣の住人が誰かもわからないような今の世の中が、住みにくくなったということかもしれない。
大嫌いな散髪屋であるが、唯一気に入っているのが、最後のマッサージ。
肩をパコパコ叩いてくれるあれである。パコ~ン、パコ~ンあの音がなんかいいですよね。
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