酒場に消えた千の話、万の笑い
酒場で飲む時、誰か横に立って、ずっとビデオカメラを回していてくれないものかと時々思う。
いや、実際そんなことをされたら、翌日そのビデオを見て深い自己嫌悪に陥ることは間違いないので、絶対にお断りするが、飲んでしゃべっている時の、あの面白すぎる会話を、翌日まったく思い出せないのが悔しくて仕方ないのだ。
あの、次から次へと繰り出されるギャグや、笑い、どでかい話から、みみっちい細かい話まで、全部記録できたら、毎回ブログのネタに悩むことなど無いのにとつくづく思う。
酒場の時間はなんであんなに楽しく、はかないのか。酒場における、議論、応酬、白熱、和解、意気投合、乾杯の数珠つなぎ。
酒場に縁のない人には、理解できないだろうが、酒場での酒飲みは変幻自在である。
今日はひとりで、静かに飲もうと思っていても、つい隣の人と意気投合、バカ話が盛り上がって、そこは即興宴会パラダイス。
ひとり静かな酒なんぞはどこへやら、仕事ですっかり疲れているはずが、体のどこにこの元気があったのかと、自分自身に驚きながらも、負けじと繰り出すギャグや笑いの大応酬。その場の雰囲気を瞬時によんで、気が付きゃ、グラス片手の七変化、カメレオンも真っ青の馴染みぶり。
お店の側もその辺のことは、商売柄、心得ていて、消えかかった炎に薪をくべるように、話がしょぼくなってきたら、新しい話題で横入りしてきて、場を盛り上げてくれる。
お店の思うつぼだと分かっていながら、盛り上がれば、もう一杯、また一杯と杯を重ねてエンドレスモード。
お店がいいからこうなるのか、単にこちらがアホなのか。酒飲みとはなんと単純な人種なのかと思いつつ、「ああ、楽しかった」で、今日も一日ゴクローサン。幸せいっぱい千鳥足、お約束の乗り過ごし、帰り着いたらバタンキュー、翌朝記憶がございません。楽しかったはずなのに、ああそれなのに、それなのに、思い出は遠い記憶の彼方。
何度同じことを繰り返しても、やめられないのは、ひょっとしてあの楽しかった会話を、今日は思い出せるかもしれないと、意地汚くまた酒場へ向かうからかもしれない。
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