真正面1本勝負
建物を撮る時、どの角度が一番美しいかと考えると、真正面が一番美しいと密かに思っている。
それは以前、図面を描く仕事をしていたせいもあるのかも知れないが、図面の場合まず正面図というのを必ず描かなくてはならない。機械だろうが、建物だろうが正面から見た絵というのは必ず必要になってくる。それが顔になるからだ。
建築の図面を描いていた時には、その正面図のコピーをとって、さらにマーカーペンや水彩絵の具で陰影を付けて、立体的に見えるような絵にしたりもした。単なる平坦な図面が、陰影を付けることで、すごくリアルな完成予想図になるのが結構楽しかった思い出がある。
そういう経験が自分自身の撮る街の写真に少なからず影響を与えているのかも知れない。
学生の頃は50ミリの標準レンズしか持っていなかった。働くようになって広角レンズを買った。しかも一般的な28ミリではなくさらに広角の 24ミリを買ったのである。
そのころは24ミリは超広角レンズといわれていたと思う。とにかくその強烈なパースペクティブが気に入って、やたら遠近感を強調した写真を撮っていたような記憶がある。画角が広いのでいろんなものがいっぱい写し込めるのも気に入っていた。画面周辺が歪むのも、それを楽しんでいたような気がする。
いつしか街をほっつき歩いて写真を撮るようになって、広角レンズは絶対に手放せないものになった。しかし以前のように遠近感が欲しいとか多くのものを写し込みたいとかのの理由ではなく、狭い路地や、後ろに下がれない場所での撮影が多いための必然性からである。
できれば歪み無く真正面から撮りたいと思う。平坦になりがちな建物の正面に光が差し込んで、それが絶妙のスパイスになって立体感を出しているような景色が撮りたい。
建物や街の写真だけでなくこれはポートレイトや花の写真にも共通していえることなのではないかと思う。
街歩きをしていて、角を曲がったところで見つけた素晴らしい建物の真正面。
その存在感の前に、カメラを構える側の小手先のテクニックだのはもうどうでもいいことなのではないかとその場にしばし立ちつくしながらそう思う時がある。
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