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2016年3月19日 (土)

これでスッキリ、被写界深度。(長文)

撮像素子の小さいコンパクトデジカメで、背景のぼけた写真が撮りにくいのはなぜでしょう。中判カメラで撮ったら、思いのほか背景がぼけてしまうのはなぜでしょう。
同じ絞り値で撮ってもぼけ具合ってフォーマット(フィルムサイズや撮像素子サイズ)やレンズや撮影距離で変わります。この辺りのカラクリを、よもかめ先生が何とか分かりやすく解説してみます。(出来るかな?)分かってしまえば簡単なオハナシ、知ってて良かった被写界深度。(笑)
レンズは撮影距離が同じなら、焦点距離の短い広角レンズほど被写界深度が深く、ぼけにくい性質があります。例えば、35ミリフルサイズのカメラにズームレンズを付けて、25ミリ広角、50ミリ標準、100ミリ望遠の各焦点距離で、同じ位置から撮ってみると、広角は被写体が小さく、望遠は大きく写りますが、背景のぼけ方は望遠の方が大きくなります。

25mm_blog
50mm_blog
100mm_blog 同じ位置から焦点距離を変えて撮ったもの。狛犬の後ろの提灯のぼけ具合は望遠ほどボケるのが分かるかと。(黄色の四角で囲った部分)

次に撮影距離を前後させて、被写体が画面上で同じ大きさに写るように撮ってみると、広角も標準も望遠も背景のぼけ具合は同じ見た目、つまり同じ被写界深度になります。
これは広角、標準、望遠レンズの画角による被写界深度の差が、撮影距離で相殺されるためです。
被写界深度は同じになりますが、撮った写真は被写体と背景の遠近感が全く変わります。広角だと背景も遠く広く写りますが遠近感によって画面の端っこや物の形が歪んで写ります、望遠だと遠近感がぎゅっと圧縮されて背景が迫って来るように写ります。いわゆる画角の違いというもの。
広角レンズは画角が広いから広角と呼びます。ちなみに対角線画角は25ミリで約82度、50ミリで約47度、100ミリで約24度になります。
撮影距離も50ミリで1メートルから撮ったとすると、100ミリだとその倍の2メートルの距離から撮らないと、被写体が同じ大きさに写りません。25ミリだと半分の50センチに近づかないといけないわけです。

25mm_blog_2
50mm_blog_2
100mm_blog_2 灯籠が同じ大きさになるように撮影距離を変えて撮ったもの。灯籠の後ろののぼりの文字のぼけ具合はほぼ皆同じになります。(黄色の四角で囲った部分)ただし、背景との距離感や灯籠の形の見え方が変わります。

この性質を頭に入れといてもらって、今度は同一撮影距離で、フォーマットの違う3種類のカメラで撮った場合を考えてみます。
分かりやすくするために、ある建物があって、それを画面いっぱいになるように、マイクロフォーサーズ、35ミリフルサイズ、6×6の中判で撮るとしましょうか。
35ミリカメラに50ミリ標準レンズを付けてちょうど画面いっぱいに建物が収まるとすると、フォーマットが35ミリの半分のマイクロフォーサーズカメラでは、同じ50ミリレンズを付けても焦点距離が倍の100ミリ相当になってしまうので、半分の焦点距離の25ミリレンズを付けなくては同じ画角になりません。
次に6×6の中判カメラに50ミリのレンズを付けると約27ミリの広角になってしまいます、(6×6の中判カメラのレンズを35ミリ換算するには×0.546で求められます)35ミリカメラの約1.8倍の大きさのフォーマットなので同じ画角にするには、50×1.8=90ミリの焦点距離ということになります。
で、おわかりかと思いますがレンズは撮影距離が同じなら焦点距離の短い広角レンズほどぼけにくい法則に当てはめると、マイクロフォーサーズは25ミリ、6×6の中判は90ミリなので焦点距離の短いマイクロフォーサーズは35ミリフルサイズよりぼけにくく、反対に長い中判はぼけやすいということになります。
6×6の二眼レフやスプリングカメラに付いているレンズは75ミリから80ミリぐらい、35ミリカメラに換算するとそれぞれ41ミリと44ミリ相当になりますのでほんのちょっと広角寄りということになりますね。
このカラクリが分かるとフォーマットの小さなカメラでぼかそうとすると絞りを開け、大きなサイズの中判では絞り込まないと同じ被写界深度にならないということも分かります。
35ミリカメラで絞りF8だと、マイクロフォーサーズならF4、6×6の中判だとF11~F16で大体同じ見た目になるのですね。
中判カメラで35ミリと同じ感覚で絞りを決めていると、思いの外ピントが浅い写真になります。目測のカメラだとピントを外すことも多いかと。そこでレンズに表記してある被写界深度目盛りを活用する事で被写界深度内に収めて撮影するということになります。
そうすると自ずと絞り込むことになるので、昔の大衆向けスプリングカメラのようにシャッタースピードが1/25、1/50、1/100の3種類ぐらいしかないカメラでも十分素敵な写真が撮れるのですね、絞り込むことによってレンズの欠点もカバーできますし。
ハーフサイズカメラは固定焦点のものが多いですが、フォーマットが小さいカメラはぼけにくいというのを逆手にとって絞りでコントロールしているわけですね。晴れた日の屋外で撮ったら驚くほどシャープな写真が撮れるのはただでさえピントが深いのに絞り込まれることによってさらに深くなるので隅々までピントが合うというわけです。
話が前後しますが、先ほど画面上で同じ大きさになるように撮れば、レンズの焦点距離(画角)による被写界深度の差は撮影距離で相殺されると書きました。
広角だからピントが深い、望遠だからぼけやすいというのは撮影距離を変えれば当てはまらなくなるわけですね。
テーブルフォトや小物の撮影にはこれを応用します。広角レンズはピントが深いと思い込んで寄って撮ると物の形が歪んでしまいます、強い遠近感で後ろに置いた物が小さく遠く写ってしまい何とも不自然な写真になりがち。
反対に望遠で離れたところから撮れば同じ被写界深度で形が歪まずに撮ることが出来ますし、遠近感も圧縮されて画面が散漫になりません。35ミリカメラで焦点距離100ミリぐらいが使い勝手がいいかと。

_mg_3334_blog_2
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上は広角25ミリで最短撮影距離から撮ったもの、下は望遠100ミリで離れたところから撮ったもの。我家の場合狭いので隣の部屋から撮りました。(笑)で、見ての通り、広角だと手前の皿が大きく写ります、実際は真ん中の皿が一番大きいのですが、遠近感でそうは見えなくなってしまいました。おまけにお皿が外側に傾いて見えますし。下の望遠で撮った方は不自然な遠近感がなく自然に見えますし、皿の大きさも正しく撮れました。

ズームレンズが主流というか当たり前になって、被写体を画面に収めるために安易にズームして撮ってしまってませんか。自分は動かず、ズームリングを回して済ませてしまう撮り方。
この時、画角と被写界深度も変化していることを分かっていただきたいのです。当然ながら背景との遠近感も変わります。ズームレンズを使っていると、その辺りが曖昧なまま、便利さだけで安易にズームしてしまいます。
よもやまカメラでは単焦点レンズの良さを何度か書いていますが、ズームできないことが不便なのではなく自分が動かないと思い通りに撮れないことで、画角や撮影距離や被写界深度のことを理解できて、撮ることが楽しくなると思っているからなのですね。
一本の単焦点レンズとじっくりお付き合いすると、レンズの仕組みがよく理解できます、そうすると他のレンズやカメラを使っても応用が利くなというのを経験上思いました。
特に古いカメラを使うとそう思いますね。一枚の写真を撮るのに時間のかけ方が違ってきます、じっくり考えて丁寧に撮るようになります。カメラに撮ってもらうのではなく自分の判断ですべてをコントロールできる楽しさとでも言いましょうか。ま、フィルムが高いので失敗できないのもありますけどね。(笑)
被写界深度はレンズとフォーマットと撮影距離も絡んできて、厳密にいうともっとややこしくて、計算式が出てくるようなレベルの話なのですが、撮影しながら関数電卓はじくわけにも行きませんからね、ざっくりした解説ですが、感じは分かっていただけるのではないかと思って書いてみました。
書いててあれもこれも言わなきゃがいっぱい出てきて、頭では分かっているのですが、文章にすると全然進まなかったですな。でも書いてて楽しかったですけどね。(笑)
長文になってしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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コメント

よもかめ亭主様おはようございます。
そうそう、これなんですよね。
がっちりまとめてあってわかりやすい記事ありがとうございます。
これにデジタルだと撮像素子の大きさがメーカー毎に違う勢いであってややこしくなるっていうか、サギみたいなことになってますね。焦点距離から想像する写真が撮れないんですよね。
撮れないくせにそこに全く触れずに◯倍ズームとか◯万画素とか言ってる。売り方が姑息ですよ。
フィルムだとカメラが大きかろうが小さかろうが、レンズの数値さえ見ればよかったのに。

投稿: Myrrh | 2016年3月21日 (月) 08時55分

何度かくじけそうになりながら、最後まで
読み切りました。ど素人のあんみつですcoldsweats01
私の持ってるレンズは2本で、片方は28mmの広角レンズ。
もう一方は85mmの中望遠レンズです。これに接写リングが
加わっています。よもかめ亭主さまの勧めに従って広角の
レンズも楽しめるようになりました!写真、楽しい!happy02

投稿: あんみつ☆乙女 | 2016年3月22日 (火) 10時25分

Myrrh様、こんばんは。
書いてたら長文になってしまいましたが、自分がスッキリしました。(笑)昔は大きなサイズの撮像素子が作れなかった事情もあったのでしょうが、おかげでややこしいことになってしまいましたね。頭の中で、35ミリ換算するのが大変、デジカメしか知らない世代の人たちにはそういう概念もないのでしょう、ややこしい世の中です。

投稿: よもかめ亭主 | 2016年3月23日 (水) 23時00分

あんみつ☆乙女様、こんばんは。
28ミリと85ミリがあればいろんな場面に対応できると思いますよ。同じものを二つのレンズで撮り比べると、違いがよく分かって面白いかと。

投稿: よもかめ亭主 | 2016年3月23日 (水) 23時01分

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