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2013年5月 5日 (日)

市場の思い出

市場の思い出というと、どうしても幼い頃のことを思い出す。母親の買い物に連れられて出かけた市場のことである。
狭い通路の両側にひしめくようにお店があって、はぐれないようにくっついて歩いていた。
どのお店もその店らしい雰囲気があって、魚屋さんのオヤジさんはいつもダミ声で安い魚の名前を連呼していて、ハエを追っ払うためのリボンの付いたゆるゆると回る棒きれのようなモノが天井から下がっていた。ハエ取り紙がぶら下がっていたところもあったし、虫を寄せ付けないように葉巻ぐらいの太さの線香のようなものが金属の受け台の上で煙を上げていたお店もあった。
豆腐屋さんのステンレス水槽の中にはパック入りではないむき出しの大きな豆腐が沈んでいて、奥からは油揚げを揚げる匂いがし、お味噌屋さんの木の樽にてんこ盛りされた味噌にはしゃもじが突き刺さっていて、乾物屋のおばちゃんが新聞紙を手巻き寿司の海苔のようにクルクルと丸めて、スコップですくったちりめんじゃこを包むのが手品のように見えた。記憶をたぐっていくといくらでも思い出せる。
どのお店もゴムひもの付いたカゴにお金を入れて上から吊してあって勘定や釣り銭はそれを引っ張って出し入れていたことも。レジスターなんてものはほとんど無かった。
果物屋さんの奥の棚にはメロンなどの値段の高い果物が飾ってあったこと、八百屋さんの大根は必ず葉っぱ付きが当たり前で売られていたこと、お米屋さんは木の升で量り売りしていたし、糠漬けに使う糠はただだった。うどん玉もそば玉もガラスケースから長い菜箸で取ってロウ引きの紙に包んでくれたこと、思い出せばきりがない。
そんな市場だったが、そのころの私にとって一番関心のあったお菓子屋さんの前だけは、母親は素通りした。他の店ではいちいち立ち止まるのにである。市場を出る頃、母親の買い物かごは大根や卵が顔をのぞかせ、いっぱいになっていた。今となっては遠い記憶である。
市場の思い出といえば、もう一つある。学生の頃、学校の帰りに肉屋さんのコロッケをほおばりながら帰ったことである。
ハンバーガーなどのファーストフードショップなどまだ少なく値段も高かったので、もっぱら市場の肉屋さんにお世話になった。揚げたてのコロッケが一つ30円ぐらい特売日は5円引きだったと思う。これなら少ない小遣いでも毎日食べられた、やたら腹の減る年頃である、実によく食べた。
コロッケだけでなく、串カツもあった。串カツといってもお好み焼き用の豚バラ肉を串に巻き付けるように刺して、衣で太らせて大きく見せているシロモノで、噛むと脂が染み出すものだったがこれも旨かった。
よく学校帰りの高校生達がファーストフードのフライドポテトなんかをほおばっている姿を見かけるが、あのころのコロッケも中身はジャガイモだけであった。若い頃というのはやたらイモを食うのかもしれない。

L21564blog 2009年、北九州市小倉旦過市場。若い時に何度か行ったことがあるが、今だ活気があって全然変わってなかったのが嬉しかった。

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